なかまの良いところは必ず褒める




 良いところを見る能力は、他人を褒める能力にも通じるものがあります。ただ、おだてるのではなく、本当に褒めるには良いところを見る能力が必要なのです。悪いところを矯正するよりも、良いところを伸ばすほうが同じ努力でも楽しいでしょうし、当然選手も積極的に取り組むこともできるでしょう。従って、(この本でも何度も述べてきましたが)その課程で行う努力から生じるセルフイメージも自然と大きくなります。そして、そこから生じる結果も、よりよいものにつながっていくのです。




 スポーツ心理学の用語に“褒め言葉サンドイッチ”というのがあります。選手の教育には、的確に褒め、叱り、そして再度褒めて、やる気を出させるというものです。




 湘北高校バスケットボール部に入部した花道のやる気を出させるために、湘北高校名物のアメとムチが与えられます。(第3巻83㌻)ゴリの厳しい叱り言葉を受ける一方で、メガネ君の的確な褒め言葉を受け、花道はさらにエネルギーを燃やしていくのです。




 褒めてあげるべきことを的確なタイミングで褒めるのは難しいことですが、とても大切なことです。「褒めると選手がつけあがる」ということをよく現場の指導者の方がおっしゃいますが、それはただ闇雲におだてるからなのであって、本当に褒めるのとは、また別なのではないでしょうか。




 スポーツ心理学的にも褒めることはさらに意味があります。叱られて出るやる気は継続的時間が短く、的確に褒められたときのやる気は継続しやすいと言われているのです。指導者もこのことを知ってか知らずか、常に叱り続けているコーチもいますが・・・・。




 “褒め言葉サンドイッチ”の手法を利用し、選手個人個人のやる気を引き出すのは大変ではあると思います。どんな状況でもわずかな良いところを見逃さないという能力が必要だからです。




 また、良いことは記憶に残りにくいので、すぐに褒めることが重要だともされています。素晴らしいドライブを仮にしたとしても、最後のイージーシュートを落としてしまったとします。ここで「なんで落としたんだ」と叱ることは簡単ですが、落としたことを一番悔しがって忘れられないのは選手本人でしょう。むしろ、その状況でドライブできた判断、その勇気、技術をすぐ褒め、確実に記憶に残すことが大切です。失敗するたびに叱られていると、セルフイメージは縮小し、同じチャンスが訪れたときに再びミスにつながってしまう可能性があるのです。良いところを見る、そして褒めるということはセルフイメージの点からも大きな意味があるのです。




 私がチームドクターとして関わっているチームでは、練習前にその日の褒められ役を決め、練習後に全員でその選手のその日に良かったことだけを述べ合うというようなことをしています。




 ひとり一人に良いところを見る能力をつけさせるのと同時に、本人も自分の良いところを少しでも出そうという練習意欲の向上を期待してのものです。




 いま一度、良いところを見る、的確に褒めるという能力についても、考えるきっかけとなっていただけたら幸いです。次章では褒めてばかりもいられないので、正しい反省の方法について述べることにします。