だだ練習するだけでは勝利できない



  モントリオール五輪(1976年)射撃・金メダリストのラニー・バッシャムという人が「勝つためにはただ練習するのでは勝てない。そのためには正しい考え方を身につけていかなければならない」というメンタル・マネージ理論を世の中に出しました。これはどのスポーツにおいても共通するものであり、興味深いものです。私は心理学者ではありませんが、このバッシャムの勝つための正しい考え方を、私の視点から紹介していこうと思います。


バッシャムはこのメンタル・マネージメント理論の中で、スポーツで勝つために必要な要素として“意識”“下意識”“セルフイメージ”の3つのバランスをあげています。


 この場合、“意識”は物事を初めて学習していくときのスタート地点として考えてください。花道がランニング・レイアップシュートをマスターするために“置いてくる”と唱えて練習しているときのレベルのことを指します。もう一つ例をあげると、初心者がランニングシュートをマスターするために、頭の中で「一歩、二歩」と数えてステップしている状態も、あてはまります。“意識”は後に説明する“下意識”“セルフイメージ”にも大きく関係してきますが、すべてのスポーツ選手にとって、上達はこの“意識”“考え方”から始まるのです。


 次に“下意識”ですが、これはスポーツ選手をはじめ、我々の持っている“実力”“自分らしさ”のことを指します。“意識”のレベルを超えて行なえる行動の基盤ともいえます。


 ステップを気にしながら練習する例をあげましたが、“下意識”のレベルになると「一歩、二歩」と頭の中で思い浮かべなくても自然にランニングシュートを行なえる状態となります。マイケル・ジョーダンは他人が真似できないようなプレーを次々と見せてくれますが、これは意図的にそのようなプレーをしているというより、彼の“下意識”のレベルで行なう彼らしさといえるでしょう。一流選手ほどこの部分が大きく、なぜ練習するのかといえば、この部分を大きくするためと答えるでしょう。そしてその大きさは練習の量と質で決まっています。人生でいえば練習は経験と同意語。そこで量ばかりが実力をアップさせるのではなく、質を決定する考え方、すなわち根性の使い方こそが大切なのです。この考え方をぜひこの『スラムダンク勝利学』で学んでいただきたいと思います。


 一方、この“下意識”(実力)が本番や試合で発揮されるかどうかは、もう一つ我々の中に存在する“セルフイメージ”という能力の大きさによって決まるのだとされています。どんなに実力があっても、本番に弱い選手はこれが小さいということになります。また、試合中に感情的になったり、おかれている状況に不安を感じたりすると、それらの考え方次第で小さくなったりします。


 この“セルフイメージ”は、日常生活における考え方や行動の仕方によって決められているということを、バッシャムは強調しています。一流の選手になればなるほど、この“セルフイメージ”を大きくするための考え方が練習だけではなく、日頃から習慣づいているのです。“セルフイメージ”を大きくしていくための考え方をマスターし、正しく根性を使うためのヒントを、さらに『スラムダンク』を通してこの本で学んでいきたいと思います。